放射性物質であるヨウ素131は、半減期(放射能の量が半分になるまでの時間)が8日間でと比較的短めですが、甲状腺に蓄積しやすいという特性を有しているため、1986年に起こったチェルノブイリ原発事故では子どもたちの甲状腺がん発生や甲状腺機能障害などの問題が発生しました。
1996年にオーストリアのウィーンで開かれた「チェルノブイリ事故から10年」会議では、原発事故から10年経過した時点で原発事故と明らかな因果関係があるとされる健康障害は子どもの甲状腺がんのみであると報告されています。
子どもたちの間で多発した甲状腺ガンの症例数のピークは1995年で、その後は減っていきます。
しかし、これは甲状腺がんの発生数が減ったことを示しているわけではありません。
甲状腺がんの進行スピードがかなり遅いため、事故当時の子ども達が成長したことで、甲状腺がんが発症する年齢が上がっていったことを意味しているのです。
また、放射性ヨウ素が甲状腺がんを引き起こす可能性は年齢が小さければ小さいほど高く、チェルノブイリ原発事故が原因と思われる甲状腺がんの発病率が最も高いのは、事故当時6歳以下だった子どもたちです。
チェルノブイリ原発事故以来は発症した子どもの甲状腺がんの半数以上を占めるベラルーシのデータによれば、甲状腺がん患者の事故当時の年齢が4歳以下のケースは、10歳から14歳までのケースの約30倍に達しています。
現在30代に成長した彼ら被曝者たちは、今後甲状腺がんを発症する確率が高いのではないかと懸念されています。